研究室の紹介

 
 

学 部:総合科学部 自然探究領域 自然環境科学授業科目群

大学院:生物圏科学研究科 環境循環系制御学専攻 環境評価論講座

和崎研究室は、広島大学 総合科学部にあります。

 ルーピンは、根から物質を多量に分泌して生育環境を改善するために、左の写真にあるような変わった形の根を作ります。 この試験管ブラシのような形の根は、房状の根、という意味でクラスター根と呼ばれます。クラスター根では、生育に必要なミネラル(主にリン)を植物が吸収できる形にする物質が多く分泌されています。その分泌物は、クラスター根の根圏に生育する微生物の群集にも影響して、中には有用な微生物が増加することもわかってきました。そこで、このクラスター根を一つの重要な研究対象と位置づけて、植物と微生物の相互関係について調べています。

 植物を育てることは簡単なようで簡単ではありません。

愛情を持って育てても栄養が足りなかったり、病気に冒されたり。その要因の一つは植物が育つ土壌にあります。


 土壌中には無数の生物が存在しています。ミミズや昆虫の幼虫などもいますが、最も数が多いのは微生物。微生物の中には植物にとって有益なものもあれば有害なものもいて、植物はこうした微生物と相互作用しながら生活しています。例えば、植物は土壌から養分を吸収して生育しますが、その養分は土壌中の微生物と奪い合いになったり、分け合ったりしています。

 植物は移動することができないので、根から物質を分泌して状況を改善しようとする能力があります。根から分泌されるものは多くが微生物の餌になりやすい有機化合物なので、根の周りには微生物が増えます。その相互作用によって、根のないところとは大きく異なった生物圏が形成されます。これを「根圏」(英語でrhizosphere)といいます。


 上の写真は、マメ科植物のルーピンです。ルーピンは、植物がたくさん必要とする養分の一つであるリンをうまく利用できます。私たちの研究室では、リンをうまく利用できるルーピンなどの植物の根圏で起きていることに興味を持って研究に取り組んでいます。例えば、右の写真にあるような平たい箱を使ってルーピンなどの植物を育てることで、根を観察したり、根の周りの土壌の性質の変化を調査したりしています。

 クラスター根は、リンを植物が吸収できるようにするために発達したと考えられています。リンは窒素と並んで富栄養化の原因となる元素ですが、一方で、食料生産に欠かすことはできません。その資源はいま、枯渇しつつあります。この二つの問題を少しでも解決しなければ、持続的な人間活動は不可能です。クラスター根の根圏にみられるような、植物-微生物相互作用を通したリンの効率的な吸収メカニズムを明らかにすることで、その能力を活用できるようになると期待しています。そして、植物によってリンが効率的に吸収できるようになれば、肥料として投入する量が減少し、環境問題も資源問題も着実に改善できると考えています。

>> もう少し詳しい研究内容についてResearch.html